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- 犬の脱毛症(アロペシア)は体の根本から治療する!漢方薬や生活で気をつけることとは
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- 2025/10/23
- 皮膚の症状
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犬には換毛期があり、生理現象として毛が抜けることがあります。ただし、かゆそうにしている・赤みがある・皮膚が丸見えになるほど抜けているなどの症状が見られる場合は、脱毛症が疑われるため注意が必要です。
脱毛症の場合、根本にある原因を見極めて適切な治療を行いましょう。「脱毛症がなかなか治らない」という場合は、根本治療ができていない可能性があります。
体のバランスを整えることで症状が改善する可能性があるため、長く脱毛症で悩んでいる方は、漢方薬治療を取り入れるのも一つの選択肢です。今回は、犬の脱毛症の原因と治療法とあわせて、漢方薬治療の可能性も解説します。
犬の脱毛症(アロペシア)はなぜ起こる?原因や換毛期との違いも解説
犬の脱毛は、季節的に起こる換毛と病的な脱毛症の2つの要因があります。脱毛症はアロペシアXとも言われ、原因に応じた適切な治療が必要になるため、それぞれの特徴を理解しておくことが大切です。
「脱毛症」と「換毛期」の違い
犬の換毛期は全身の毛が均一に抜けますが、脱毛症の場合、部分的に抜けたり皮膚が赤くなったりするのが特徴です。
<換毛期>
・皮膚が丸見えになるほど抜けることはない
・皮膚は健康的な色をしている
・通常、春と秋の2回起こる
<脱毛症>
・部分的に大量に抜けることが多い
・皮膚が丸見えになるほど抜けることもある
・皮膚に赤みや湿疹、フケなどの異常が見られる
・季節に関係なく起こる
換毛期は季節の変化に合わせて体毛を調整する生理現象ですが、脱毛症は感染症やアレルギーなどのさまざまな原因が考えられるため、早めに病院を受診して重症化を防ぐことが大切です。
参考:アニコム損害保険株式会社「犬の換毛期について!時期や期間、ケアのポイントまで解説【獣医師監修】」
犬の脱毛症の原因
犬の脱毛症では、以下のような原因がよく見られます。
・感染症:マラセチア皮膚炎、ニキビダニ症、膿皮症など
・アレルギー性疾患:食物アレルギー、アトピー性皮膚炎など
・内分泌疾患:副腎皮質機能更新症(クッシング症候群)、甲状腺機能低下症など
・遺伝性疾患:黒色被毛形成異常症、パターン症など
上記以外にも、「冷えによる血流不足」や「ストレスによる手舐め」「ステロイドの減薬」などで脱毛症が起こることもあります。
脱毛症は治る?
犬の脱毛症は、脱毛の根本にある原因を見極めて治療を行えば、徐々に改善する見込みがあります。例えば、感染症が原因であれば薬や抗生物質、内分泌疾患ならその疾患の治療を行うなどです。
ただし、薬で無理やり症状を抑えようとすると、炎症が悪化したり症状を繰り返したりすることがあります。そのため、症状だけの対処ではなく原因である炎症をいかに抑えてあげるのかが、体にも生活の質にも重要です。
犬の脱毛症(アロペシア)の治療法|一般的な方法から漢方薬の選択肢までを紹介
犬の脱毛症に対する治療法は、原因によってさまざまな選択肢があります。症状の改善を目指すには、その子に合った治療法を選択することが大切です。ここでは、一般的な治療法から「漢方薬治療」という選択肢について解説します。
内服薬や外用薬を使用する
犬の脱毛症の治療は原因によって異なりますが、内服薬や外用薬を使用するのが一般的です。
・感染症:抗生物質の内服や外用薬の塗布、抗菌シャンプーなど
・寄生虫:駆虫薬
・アレルギー:抗アレルギー薬、食事療法など
・ストレス:ストレス源の除去、必要に応じて抗不安薬を処方
このように、原因によって治療法が異なるため、まずは原因の特定が重要といえるでしょう。
なかなか治らないのは根本治療ではないからかも
「内服薬や外用薬を使用してもなかなか改善されない」と、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。これは、症状に対する根本治療ができていないからかもしれません。
特によく見られるのが、ホルモン治療で症状が改善されず、炎症で皮膚も黒くなってしまっている状態です。症状や体調の悪化を防ぐためにも「なかなか治らない…」と悩んでいる方は、根本治療ができているのかを見直してみましょう。
その子の原因に合う漢方薬治療を
犬の脱毛症に対する治療は、カビや菌などの表面上の原因に対してだけでなく、その子に合った治療をできているのかが重要です。そのため漢方薬治療では、炎症があるのかどうか、体質・体のバランスに合っているのかという視点から治療を行います。
例えばアロペシアXの場合、腎虚からくる冷えが原因のこともあれば、逆に熱が強すぎるのが原因のことも多いです。このように、一言に漢方薬治療といっても、真逆の治療が必要になることがあります。
体に合っていない漢方薬を飲むと、不調が現れたり悪化したりするおそれがあるため、その子の体質・体のバランスを見極めて治療を進めることが大切です。
犬の脱毛症対策|バランスのとれた健康な体が鍵
犬の脱毛症対策で大切なのは、犬の体の声を聞いた生活で、バランスのとれた健康な体をつくることです。脱毛症が起こった場合、漢方薬で体質改善ができると、脱毛症だけでなくそのほかの不調も改善できる可能性があります。
健康な体作りで毛が生えた症例
犬の脱毛症の漢方薬治療において、当院では以下のような症例があります。
アロペシアX(脱毛X)といわれるポメラニアンの脱毛症で、漢方薬治療を行っている症例です。この例では、地肌が目立つほどに毛が少なくなって皮膚科専門医に相談しましたが、育毛剤やビタミン剤で治療しても改善する兆しが見えず、先生には「もともと毛が薄い子じゃない?」ということも言われたそうです。
そこで当院にご相談いただき、脱毛の治療というよりは、炎症体質の改善にくわえて補血の漢方も組み合わせながら漢方薬治療を行いました。これにより、漢方薬を飲み始めて半年ほどで、地肌が見えないほど毛が生え揃ってきたのです。
漢方薬で体質改善ができる
漢方薬治療は、その子の体質や体のバランスに合った方法を見極め、免疫や体質を調整して根本治療を目指す治療法です。つまり、症状に対する治療だけを行うのではなく、体質を改善してバランスの取れた健康な体を目指すことを目的とした治療を行います。
このような理由から、症状の改善を目指して漢方薬治療を取り入れると、脱毛症だけでなくその他さまざまな不調を改善できる可能性があるのです。
飼い犬の体の声を聞いた生活が大事
日常生活では、犬の体の声を聞いた生活が大切です。特に、食事や温度に注意しましょう。
食事では、栄養を詰め込んだ保存食より、質素でも食事の質が重要です。その子が食べたがっているもの、新鮮なものを用意しましょう。
また、暑がりなのか寒がりなのかを見極めて、温度調整をすることも欠かせません。暑がりなら、暑さに気をつけてしっかりとクールダウンをしてあげる、寒がりなら毛布やタオルケットを活用して寒さ対策をする、ということです。
犬の脱毛症(アロペシア)についてよくある質問
Q1. 犬の脱毛症は、どれくらいで治りますか?
原因や体質によって異なります。漢方薬治療の場合は漢方が体に合っていれば、飲んですぐや服用後1週間ほどで赤みや痒みが落ち着く場合もあるでしょう。すぐに毛が生えるというよりも、まず「皮膚の赤みが減る」「かゆみが落ち着く」などの変化から現れることが多いです。焦らず、体質改善を続けていくことが大切です。
Q2. 漢方薬はずっと飲み続けなければいけませんか?
ずっと飲み続ける必要はありません。漢方薬は症状を抑えるのではなく、体質や体のバランスを整えることで自然治癒力を高める治療法です。そのため、体の状態が整って症状が安定してきたら、少しずつ減薬・終了できることもあります。季節や年齢によって体質が変化するため、飲み続けて体調を整える子もいます。
Q3. かゆみがなくても、脱毛があれば受診した方がいいですか?
はい、受診をおすすめします。かゆみがない脱毛でも、ホルモンや血流、冷えなど体のバランスの乱れが関係していることがあります。脱毛の根本原因を見極めた上で治療を行ったり、日常生活でサポートしたりするのが大切です。
まとめ|漢方薬治療で犬の脱毛症(アロペシア)を改善できる可能性について解説
犬の脱毛症にはさまざまな原因があり、「数年治療を続けているけど治らない…」と悩む飼い主は少なくありません。これは、脱毛症に対する根本治療ができていない可能性があるからです。
一般的な内服薬や外用薬では、根本治療ができずに症状が改善しなかったり、繰り返したりすることがあるのです。そこで、体のバランスを整えて根本治療を目指す漢方薬治療なら、脱毛症を改善できる可能性があります。
毛が生えてくるために必要なのは、バランスのとれた健康な体です。当院では、その子の体質・体のバランスに合った治療を行い、体質の改善を目指します。「愛犬の抜け毛が気になる」「脱毛症がなかなか治らない」などでお悩みの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。