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- 犬の多発性関節炎は治るの?漢方薬で生活の質を改善する治療方法とは
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- 2025/10/19
- 免疫性の炎症
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犬の多発性関節炎は、原因がわからないことも多く治療が長引くケースが少なくありません。長く投薬が続くと「多発性関節炎は治るのだろうか」「薬の副作用が心配」と思う飼い主さんも多いでしょう。
東洋医学の視点でみると、犬の多発性関節炎の原因が見えてきます。当院での治療例も参考に、犬の多発性関節炎の原因や治療法、漢方薬で生活の質を上げられる可能性について解説します。
愛犬に健康で長生きしてもらい、家族で楽しい時間を過ごせるようにしましょう。
犬が足を引きずるのは多発性関節炎のせい?原因・症状を解説
犬が足を引きずっていたり、歩きにくそうにしていたりすると、なんとかして戻してあげたいと思う飼い主さんが多いでしょう。犬が足を引きずる病気の1つに多発性関節炎があります。原因・症状、そして予後について、整理していきましょう。
原因は「免疫の異常」
東洋医学的にみると、犬の多発性関節炎は免疫の異常が原因です。そのため、検査の他、その子の体質や現在の様子を含めて診察し、免疫の異常を整える治療を行います。
しかし、西洋医学では原因がわからないことも多いです。細菌が関係せず、抗生物質が効かない炎症に対して、ステロイドや免疫抑制剤などで抑える治療が行われます。
多発性関節炎の症状
多発性関節炎では、関節の腫れや熱感・痛みなどがみられるため、足を引きずったり歩きたがらなかったりします。お出かけを嫌がる子もいるでしょう。また、免疫の異常により慢性炎症が起きている場合は、次のような症状もみられます。
・発熱
・腹鳴や腹痛
・血便
・食欲不振
・抜け毛や皮膚の黒ずみ
血液検査で炎症の数値CRPが上昇するのも特徴です。関節炎とは関係ないと考えられがちな胃腸・皮膚にも炎症症状がみられる可能性もあります。炎症が体全体に影響を及ぼすことがあるため、犬の不調に気づいたら病院を受診しましょう。
多発性関節炎は治るのか
多発性関節炎は、完治が難しい病気といわれています。なぜなら、西洋医学では炎症が起きる原因が特定できないとされているためです。
しかし、早期発見をし、適切な治療を行うことで、生活の質を整えられる可能性があります。生活の質を整えて犬の元気な姿をとり戻すためにも、治療法の選択肢について知っておきましょう。
参考:特発性多発性関節炎を起こしたミニチュアダックスフンドの症例
免疫を整える観点から|犬の多発性関節炎に対する治療法とは
最近では、薬や辛い治療を続けるよりは、愛犬らしく元気に長生きして欲しいと願う飼い主さんが増えています。従来の西洋学的な治療について解説しながら、漢方薬治療の可能性についてもご紹介します。
免疫抑制剤では治らない!?
西洋医学では、炎症を抑えるためにステロイドや免疫抑制剤が使用されるケースが多いです。治療初期の反応率は81%と比較的高いので、症状がよくなったと感じる方も多いでしょう。しかし、病気がよくなったとされるケースの31%は再発が認められるとの報告もあります。そのため、薬を手放せなくなるケースも多いです。
また、免疫を抑制すると体が弱くなってしまうため、炎症がさらに悪化したり他の病気にかかったりする可能性もあります。
漢方薬で免疫を整えられる
再発を繰り返したり一生薬を飲まなければならなかったりする理由は、根本原因を改善できていないからです。東洋医学的な視点では、犬の多発性関節炎の原因は免疫異常による炎症なので、免疫を整える必要があります。
漢方薬で異常な免疫や体質を整えると、強い炎症でも改善するケースがあります。炎症が落ち着くと、関節の痛みだけでなく、胃腸の不調など全身の状態も改善できる可能性があるのです。
IBDと多発性関節炎の治療例
漢方薬で犬の多発性関節炎を治療している病院は多くはないので、本当に効果があるのかどうか心配な方もいらっしゃるかもしれません。IBDと多発性関節炎で当院を受診され、治療を行った症例を紹介します。
小さい頃からお腹が弱かったマロンちゃん。定期的に腹鳴・下痢の症状があり、元気がなくなって血便を繰り返しステロイドを服用していました。治療を続けても腹痛は改善せず、後ろ足を引きずるようになり、多発性関節炎を疑われます。
他院での検査の前に当院を受診され、炎症体質であることがわかり、漢方薬治療を始めました。漢方薬治療を2週間行うと、免疫が整って自然と炎症が落ち着き、胃腸症状や関節炎も改善したのです。
体調を安定させるために漢方薬を続ける子も多いですが、体の根本から治療を行うと毎日元気で過ごせるようになります。
参考:東京大学学術機関リポジトリ「イヌの特発性多発性関節炎の - 病態生理に関する研究」
犬が多発性関節炎になっても漢方薬で生活の質を改善できる理由
犬が多発性関節炎になると、治療がストレスになるだけではなく、お出かけができなくなるなど生活の質が下がるかもしれません。「辛い症状を乗り越えて病気が治ったら…」という未来のことではなく、「今を楽しみたい」と感じている犬は多いです。漢方薬で生活の質を改善できる理由を3つご紹介します。
理由①不調の根本を整えるから
ステロイドや免疫抑制などで症状を抑え込むと、辛い副作用が出て元気がない・食欲が落ちるなど生活の質が下がってしまいます。
多発性関節炎の根本原因は免疫異常による体の炎症です。漢方薬治療では、免疫を整えて炎症を改善するため、根本から体を整えることができます。
理由②合併症が起きにくい体づくりができるから
炎症を抑える治療では、免疫抑制剤がよく使用されますが、同時に免疫が弱る可能性もあります。免疫が弱ると、多発性関節炎だけでなく、他の炎症症状がでたり、別の病気にかかったりするかもしれません。
漢方では免疫を整えながら治療を行うため、合併症を防ぎながら生活ができます。他の病気によるストレスや体への負担を避けて、生活の質を高められるといえるでしょう。
理由③その子のその時に合った漢方を処方できるから
体の不調が出るのは病気の時だけではありません。季節の変化や年齢、その子の元々の体質によっても体の状況は変わります。その時期・季節に合った服を着せるように、その時の体調に合った漢方を服用するのが大切です。
体質が整ってくると、不調になっても病気と戦える体を作ることができ、結果的に安定して元気な時間が増えるでしょう。
犬の多発性関節炎についてよくある質問
Q1. 犬の多発性関節炎は、漢方薬で治りますか?
A. 多発性関節炎は完治が難しいといわれる病気ですが、漢方薬で免疫異常を整えることで、症状が改善する例もあります。痛みが減り、食欲や元気が戻るなど、生活の質が改善するケースも多いです。Q2. 漢方薬はどのくらいの期間飲み続ける必要がありますか?
A. 体質や症状の重さによって異なりますが、まずは1〜2週間かけて体の変化をみていきます。体質が整い、炎症が落ち着いてくると、徐々に薬の量を減らしたり、別の漢方に変える可能性もあるでしょう。再発を防ぐため、体調維持の目的で続ける子もいます。
Q3. 漢方薬とステロイドなどの西洋薬は一緒に使えますか?
A. はい、併用が可能です。ステロイドや免疫抑制剤をすでに使っている場合、まずは併用しながら徐々に漢方薬で体を整えていきます。状態が安定してくると、西洋薬の量を減らせるケースもあります。
まとめ|犬の多発性関節炎は免疫を整える治療が重要
犬の多発性関節炎は、原因不明だと言われ、ステロイドや免疫抑制剤で治療するのが一般的です。しかし、東洋医学的にみると免疫や体質の異常が原因なので、まずは漢方薬で免疫を整える治療を行います。
漢方薬治療では体の根本から整うため、症状が改善するだけでなく、合併症を防いで生活の質を高めることができるのです。当院では、犬の多発性関節炎に対する治療例もあります。愛犬と長く元気に過ごしたい方は、一度ご相談ください。