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犬の低アルブミン血症の原因や症状を解説|漢方治療薬ができることとは
2025/10/17
胃腸の症状

犬の低アルブミン血症は、下痢が治らず、血液検査をすると見つかることがほとんどです。また、何の症状もなく血液検査をしたら低アルブミン血症が見つかった、というケースもあります。自然に治ることは稀で治療開始後は、原因を特定できずに数値を抑えるための投薬が続くことがほとんどです。


長期にわたる投薬は、犬の体に大きな負担となるため、ステロイドを減らしてアルブミンを維持できるようにする根本的な改善が必要です。その方法の一つに、体を整えて症状の改善を目指す漢方薬治療があります。


漢方薬は、胃腸機能や腎機能、あるいは免疫を直接助けられる可能性のある治療法です。犬の低アルブミン血症の原因や症状を理解し、適切な治療法を選択できるようにしましょう。


犬の低アルブミン血症の原因は?気をつけたい症状と早期発見のポイント


犬の低アルブミン血症は、血液中のアルブミンというタンパク質が低下している状態のことを指します。下痢で見つかることが多い病気ですが、まれに症状がなく健康診断で見つかることもあります。早期発見・治療のために、低アルブミン血症が起こる原因や、気をつけたい症状を理解しておきましょう。


犬の低アルブミン血症の原因


犬の低アルブミン血症の原因はさまざまありますが、特によく見られるのが、アルブミンが体外に失われる「蛋白漏出性腸症」です。これは、炎症性腸疾患(IBD)やリンパ管拡張症により、腸管からアルブミンが漏れ出てしまうことから起こります。


その他にも、犬の低アルブミン血症は以下のような原因で起こることもあります。


蛋白漏出性腎症:腎臓の機能障害により、アルブミンが尿中に過剰に排出されて失われる

アルブミン合成の低下:肝不全によってアルブミンを作れなくなる

栄養不足:長期間にわたる栄養不足やタンパク質摂取不足によって、アルブミンの合成に必要な材料が不足している

外部損失:出血によってアルブミンが失われて低下する


犬の低アルブミン血症でよく見られる症状


犬の低アルブミン血症が起こると、体内の水分を保持する働きが低下するため、さまざまな症状が現れます。


・むくみ

・腹水や胸水

・下痢や軟便

・食欲不振や元気消失

・呼吸困難

・傷の治りが遅い


ただし、全く症状がなく健康診断の際に病気が見つかることもあるため、定期的な検査が大切です。


定期的な健康診断で早期発見を


犬の低アルブミン血症は、症状が現れる前に発見して治療を開始できるのが理想的です。そのためには、定期的な健康診断で普段の基準値を把握したり、いつもより様子が変だと感じることがあれば検査しておくことが、変化に気づくための重要な手がかりとなります。


また、2.7〜4.2g/dLが正常値とされている犬のアルブミン値ですが、基準値内であっても普段の数値よりも大幅に下がっている場合は注意が必要です。長く一緒に過ごすためにも、年に一度は健康診断を受け、元気なときのアルブミン値を把握しておきましょう。


参考:どうぶつ健康センター「生化学検査」


長期的な治療になりやすい犬の低アルブミン血症|漢方薬治療の検討も


犬の低アルブミン血症は、長期的な投薬で数値を抑え続ける治療を行うのがほとんどです。しかし、投薬の長期化は、炎症の悪化や他の疾患の発症などにつながる恐れがあります。それらを防ぐためには、体を整えられる漢方薬治療を検討するのも一つの方法です。


まずは原因の特定が大切


犬の低アルブミン血症を治療するには、まずは原因の特定がとても重要です。原因となる疾患に適した治療を行い、症状の改善を目指します。


しかし、西洋医学では原因が特定できずにステロイドや免疫抑制剤で炎症を抑えながら、数値を抑え続けることがほとんどです。「一生治らない」「一生投薬を続けなければいけない」と診断されることも珍しくありません。


東洋医学的な視点でみると、犬の低アルブミン血症の原因は、免疫異常による炎症や胃腸機能、腎機能の低下です。当院では西洋医学では原因がわからない低アルブミン血症に対して、漢方薬で免疫や腎臓、胃腸機能を整える治療を行います。


投薬や食事療法が一般的


犬の低アルブミン血症に対しては、ステロイドや免疫抑制剤などの投与や食事療法を行うのが一般的です。しかし、投薬による数値の回復は一時的なことも多く、長期にわたっての治療になりやすい特徴があります。


長期的な投薬治療は免疫が乱れる(弱る)分、余計に炎症が起こりやすくなるため、免疫や体の調子を整えるといった根本的な改善が必要です。


漢方薬治療の可能性とは


低アルブミン血症が見つかってから数年間ステロイドや免疫抑制剤の投与を行っていても、数値が安定せずに悩んでいる方は少なくありません。漢方薬治療なら、弱っている胃腸機能を助けたり、異常を起こしている免疫を整えながらステロイドを減薬できるケースもあります。


また、漢方薬はそれぞれの子の体質を見極め、体の弱い部分を助けたり免疫のバランスを整えたりすることで、結果的に症状が改善するのが特徴です。


・腎虚や胃腸が弱っているなら、それをサポートする

・冷えや熱が過剰だったり不足したりしている場合は、バランスを整える

・免疫が弱っていれば免疫を助ける(整える)


といったように、原因に合わせて体を整えながら症状改善を目指します。


犬の低アルブミン血症から起こる重篤な疾患を防ぐためにできること


犬の低アルブミン血症は、症状が進行すると他の疾患を発症する可能性があります。そのため、投薬で数値を抑え続けるのではなく、根本的要因を対策してアルブミンを維持するのが大切です。重篤な疾患を防ぐために、飼い主ができることを理解しておきましょう。


低アルブミン血症から起こる可能性のある疾患


犬の低アルブミン血症は、心筋炎や腎臓病のような重篤な疾患につながる可能性があります。


東洋医学では、個別の病気としてだけでなく、体のバランスの乱れとしてとらえます。低アルブミン血症から起こる可能性のある疾患と、東洋医学的に考えられる可能性は次の通りです。


・関節炎

・腎炎

・心筋炎

→免疫が乱れていることが考えられる


・腎臓病

・泌尿器トラブル

・心不全

→腎が弱っていることが考えられる

漢方治療薬で根本的要因の対策をする

漢方薬治療は、炎症を抑えるのではなく、炎症の元となる原因を改善するのを目指す治療です。診療はもちろん、嘔吐や下痢のタイミング・色・匂い、Oリングテストも使いながら、体のバランスを把握して漢方薬を見極めます


特に、低アルブミン血症の原因としてよく見られる炎症性腸疾患(IBD)は、漢方薬治療で胃腸機能や免疫を整えて改善できる可能性のある疾患の一つです。


元々の体質も考慮した治療を行う


低アルブミン血症に対しては、元々の体質を考慮した治療が大切です。例えば、胃腸機能が弱い場合、炎症だけを抑える治療には注意しましょう。炎症が起きている場合は熱が強い状態ですが、胃腸機能が弱い子は熱を下げるとお腹が冷えすぎて不調を起こしてしまうかもしれません。


当院では炎症・症状だけをみるのではなく、元々の体質もみながら適切な漢方薬を処方します。


犬の低アルブミン血症についてよくある質問

Q1. 犬の低アルブミン血症はどのくらいで治りますか?

A. 低アルブミン血症は、その子の体質や症状にもよりますが、一般的には長期間の治療を続けるケースが多いです。ステロイドや免疫抑制剤などで症状を抑えるだけの治療の場合は、なかなか治らないと感じる飼い主さんもいらっしゃいます。当院では漢方薬治療を開始し、2ヶ月でアルブミン値が正常になった症例があります。

Q2. 一度良くなっても再発することはありますか?

A. 原因となる炎症や免疫バランスの乱れが残っている場合、再発することもあります。特にステロイドなどで一時的に数値が改善しても、根本的な原因が解消されていないと再びアルブミン値が下がることがあるのです。漢方薬治療では症状の根本原因を探り、体質から改善していきます。

Q3. 漢方薬はどのくらいの期間続ける必要がありますか?

A. 漢方薬は体質を整える治療のため、即効性よりも持続的な改善を重視します。効果は1週間〜2週間で出てくる子もいますが、症状がなくなっても体質改善のために続ける子も多いです。徐々にステロイドなどの薬を減らせるケースもあり、犬の状態に合わせて無理のないペースで治療を進めていきます。

まとめ|犬の低アルブミン血症は原因となる疾患の特定と治療が大切


犬の低アルブミン血症は、症状が出る前に治療を開始するのが理想的です。そのためには、定期的な健康診断で、犬が元気なときのアルブミンの数値を把握しておく必要があります。数値の変化に気づければ、投薬や食事療法など、適切な治療を早くに始められるでしょう。


しかし、低アルブミン血症の原因を特定できないことも多く、「一生投薬を続けなければいけない」といわれることも少なくありません。長期的な投薬は、症状が悪化したり他の疾患を発症したりなど、犬の体に大きな負担となります。


それらを防ぐ方法として、体を整えて症状の改善を目指せる漢方薬治療を取り入れるのも一つの方法です。低アルブミン血症の長期にわたる治療でお困りの方は、お気軽にご相談ください。


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