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犬のリンパ管拡張症とは|漢方薬治療の可能性とメリットを解説
2025/10/15
免疫性の炎症

リンパ管拡張症は腸のリンパ管の閉塞または破綻により、リンパ液が腸管内へ漏れ出してしまう病気で、放っておくと体調を大きく崩してしまいます。ステロイドや免疫抑制剤などを使用するのが一般的ですが、長期的な治療になると不安を抱える飼い主さんも少なくありません。


本記事では、犬のリンパ管拡張症の治療法の1つとして漢方薬をご紹介します。


基礎知識から、西洋医学と東洋医学の治療の違い、漢方薬を取り入れるメリットを理解し、愛犬を健康で長生きさせてあげましょう。


犬のリンパ管拡張症はどんな病気?症状と原因を知ろう


犬がリンパ管拡張症かもしれないと思ったら、心配になる飼い主さんが多いです。適切な治療を見つけ、対策をするために症状や原因などの基礎知識を知っておきましょう。


リンパ管拡張症とは?


犬のリンパ管拡張症とは、腸のリンパ管が拡張してリンパ液が漏れ出し、低タンパク血症を引き起こす病気です。ヨークシャー・テリア、マルチーズなどがなりやすいと言われていますが、どの犬種でも発症する可能性があります。


予後は様々で、適切な治療を行えば症状が落ち着いてくるケースも多いです。しかし、短期間で亡くなってしまう子もいます。犬の不調に気付いたら、すぐに受診しましょう。


原因と症状


犬のリンパ管拡張症は、東洋医学的な視点でみると免疫異常が原因です。免疫異常により激しい炎症が起き、リンパ管が詰まることで、次のような症状が現れます。


・お腹の痛み

・下痢

・体重減少

・腹水

・浮腫


しかし、症状だけではただの下痢かリンパ管拡張症かはわかりません。慢性下痢の治療や検査の結果、リンパ管拡張症と診断されることもあります。


参考:長期寛解が得られた犬の腸リンパ管拡張症の1例



犬のリンパ管拡張症の治療|西洋医学・東洋医学の違いを解説


犬のリンパ管拡張症は診断されてからの治療の選択が重要です。西洋医学と東洋医学では治療方法が異なります。どちらが愛犬や飼い主さんに合っているかを見極められるよう、両者の違いを知っておきましょう。


西洋医学での治療方法


西洋医学では、リンパ管拡張症による炎症を抑えるために、多量のステロイドや免疫抑制剤を組み合わせる治療方法が一般的です。原因である免疫異常の治療というよりは、炎症を抑えることがメインになるため、根本からは解決しない場合もあります。


また、ステロイドや免疫抑制剤で治らない場合は、抗がん剤が使用されるかもしれません。これらの薬により免疫が弱ったり、壊れたりすると、さらに免疫異常が起こります。結果的に症状が悪化したり、別の病気にかかったりする可能性も出てきます。



東洋医学的な治療方法


東洋医学では、まずは炎症の原因となっている免疫異常を治療します。免疫を整えることで、異常な炎症が改善していきます。また、胃腸機能にも問題があり、リンパ管拡張症の原因となっていることが多いです。漢方薬で体質を整えると、胃腸機能も改善していきます。


西洋医学の治療でステロイドや免疫抑制剤を使っていても、漢方薬治療を開始できます。今飲んでいる薬を急にやめてしまうと、リバウンドで体調が悪くなるかもしれません。漢方薬で免疫や体質を整えながら、少しずつ減らしていく治療を行います。


犬の漢方薬治療例


漢方薬で犬のリンパ管拡張症が改善するのか、気になる方も多いでしょう。当院での症例をご紹介します。


柴犬とポメラニアンのミックスの3歳の子は、急なお腹の痛みで立てなくなりました。他院で診断後、ステロイドの服用で症状は一時的に改善しましたが、副作用がひどく元気のない状態が続き、当院で漢方薬治療を開始。


漢方薬でお腹の補助と免疫を整える治療を行い、ステロイドは治療開始後2ヶ月ほどでやめることができました。季節の変化によりお腹の調子を崩した時も、漢方を調整して乗り切ることができています。


犬のリンパ管拡張症に対する漢方薬治療の3つのメリット


犬のリンパ管拡張症に漢方薬を使用するメリットは、症状が改善されるだけではありません。 飼い犬が健康に長生きできるサポートが可能です。漢方薬治療の3つのメリットをみていきましょう。

①免疫や胃腸の状態を整えられる

リンパ管拡張症の炎症の理由は、免疫の弱さからくる免疫異常です。そのため、免疫を整える必要があります。これは症状を抑える治療がメインの西洋医学では難しく、薬の副作用が体への負担となり、なかなか治らない・弱っている原因となるかもしれません。


漢方で免疫や胃腸を整えると、免疫異常が改善され、根本的な治療ができる可能性があります。


②体調がよくなる


漢方薬治療では、自然に近いかたちで体をサポートできます。リンパ管拡張症で処方されるステロイドなどは症状を抑える薬なので、体への負担が大きいです。ステロイドや免疫抑制剤を飲み続けると症状が治っても元気がない・薬をずっと止められない・副作用で他の病気になることもあります。


漢方も体に合わないと副作用が出るので、適切な診断をして体に合わせた漢方薬を飲む必要があります。漢方薬治療を行うと、病気にかかる前よりも体調をよくすることができる点もメリットといえるでしょう。


③体調を安定して維持できる


漢方薬治療では、薬で無理やり症状や数値を改善しているわけではありません。根本から整えることで、症状や数値も改善し、元気な状態を維持しやすくなります。


また、症状が落ち着いた後も、季節の変化でお腹を壊すなどぶり返す子もいます。漢方薬治療では季節の変化などで体調を崩した時に、その子の体調に合わせた処方ができるのが特徴です。


例えば、暑さで炎症がひどくなっている時は熱を下げる漢方薬を処方したり、冷えている時は温める作用のある薬を飲んでもらったりします。安定して体調を維持できると、他の病気になりにくいというメリットもあります。


犬のリンパ管拡張症の漢方薬治療についてよくある質問

Q1. 犬のリンパ管拡張症は一度治れば再発しませんか?

A1. リンパ管拡張症は再発する可能性があります。明確な理由がなくても、季節の変化や体調不良がきっかけで症状がぶり返すかもしれません。ただし、漢方薬治療で免疫や胃腸の状態を整えると、再発のリスクを減らし、体調を安定させやすくなります。

Q2. 漢方薬はどのくらいの期間で効果がでますか?

 A2. 漢方薬は効果が出るのがゆっくりな印象があるかもしれませんが、早い子で1週間、飲み始めてすぐに効果が出る子もいます。少し体調がよくなったり、元気になったりするなどの兆候がみられるでしょう。あまり効果が感じられない場合は、漢方薬の調整を行うのでご相談ください。

Q3. 今ステロイドを飲んでいるのですが、漢方薬も一緒に使えますか?

 A3. はい、併用可能です。現在の薬を急にやめると体調が悪化する可能性があるため、漢方薬を取り入れながら徐々に減薬していく方法を検討します。当院には、ステロイドを減薬して治療を行っている子もいますので、一度ご相談ください。


まとめ|犬のリンパ管拡張は漢方薬で原因になっている免疫や胃腸の状態を整えるのが大事


犬がリンパ管拡張症になると、ステロイドや免疫抑制剤を使用して治療するケースが多いです。しかし、症状がなかなか治らなかったり、薬を飲み続けたりして心配になる飼い主さんもいらっしゃるでしょう。


見えている症状を抑えて数値を改善する西洋医学的な治療とは異なり、漢方薬では免疫や胃腸の調子を整える根本的な治療を行います。リンパ管拡張症の症状が改善するだけではなく、長期的な体調の安定にもつながるのです。


当院では、犬のリンパ管拡張症に対して、漢方薬を使って根本的な治療を行っております。生活の質を向上させて犬に元気で過ごして欲しい方は、お気軽にご相談ください。

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