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- 犬が肝炎と診断されたら?原因・症状と体質ケアの考え方
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- 2026/05/01
- 腎臓や肝臓などの内臓疾患
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「健康診断の結果、愛犬の肝臓数値が高いと言われてしまった……」。
いつも通りごはんを食べて、しっぽを振る我が子を愛おしく思う反面、「もっと早く気づいてあげられたら」とご自身を責めてしまう飼い主さんも少なくありません。薬を飲み続けることへの不安や、「もっと根本的なケアはないかな」という迷いは、愛犬を深く想うからこその愛情です。この記事では、犬の肝炎の基本知識から、体質の根本改善を目指す東洋医学の考え方まで、一緒に紐解いていきます。
愛犬が「肝炎」と診断されたら知っておきたいこと

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、ある程度まで悪化しないと症状が表面化しにくいデリケートな存在です。健康診断で突然数値の異常を告げられても、すぐに落ち込む必要はありません。症状が出ていない今は、体が懸命にバランスを保とうとしている証拠。つまり「今からできることがたくさんある」というポジティブなサインでもあります。まずは現状を正しく把握することが、愛犬を守るための第一歩になるでしょう。
急性と慢性の違いを知ろう
犬の急性肝炎は、ウイルスや中毒などが原因とされる急激に炎症が起こる状態で、嘔吐や黄疸など目に見えるサインが比較的はっきり現れるのが特徴。対して慢性肝炎は、数ヶ月から数年かけてじわじわと、静かに炎症が続いていく病態です。慢性肝炎は初期の自覚症状が乏しく、「最近寝ている時間が増えたかな?」といった些細な変化に気づいてあげることが、進行を食い止める大きな鍵になります。進行すると黄疸・腹水・肝硬変へと移行するリスクもあるため、定期健診での早期発見がとても大切です。
肝炎の原因と春の「熱」の関係
原因はウイルス・細菌感染、薬物・中毒性のものや、遺伝的要因などさまざまです。一方で「原因不明」とされる慢性肝炎も多く、答えが出ないまま悩んでいる飼い主さんも多いでしょう。東洋医学では、春は気温上昇によって体内に余分な熱がこもる「炎症体質」になり、それが肝臓の炎症を引き起こす引き金になると考えます。季節によって数値が変わる、という子には、特にこの視点がヒントになるかもしれません。
血液検査の数値が示すサイン
診断結果用紙に並ぶ数字は、愛犬の体からのメッセージです。各数値の役割を組み合わせることで、今、肝臓で何が起きているのかが見えてきます。
・ALT(GPT)→肝細胞の壊れ具合:細胞がダメージを受けて壊れると血液中へ漏れ出します。500〜1,000 U/Lを超える場合は重度の炎症に注意。
・AST(GOT)→深刻なダメージの指標:肝臓だけでなく筋肉などにも含まれる酵素。ALTと共に上昇している場合、より深い細胞破壊の可能性も。
・ALP:胆汁の通り道(胆管)の詰まりやホルモン異常で上昇。3倍以上の高い数値が続く場合は、他の疾患も疑われます。
・GGT:胆管トラブルの裏付け。ALPと同様、胆汁の流れが悪くなると反応。ALPとセットで見ることで、トラブルの場所を特定する手がかりに。
数値に加え、食欲不振や嘔吐、黄疸、腹水などの症状がある場合は緊急受診を。特に黄疸や腹水は肝機能の著しい低下が疑われます。数値だけで判断せず、エコー検査等もふまえて、愛犬の様子を多角的に見ることが大切です。
犬の肝炎の治療、薬だけで本当に大丈夫か考えてみよう
「このまま薬を飲み続けて大丈夫…?」——今の治療に疑問を持つことは、愛犬の肝炎の症状をもっとよくしたいという気持ちの表れです。西洋医学は、今起きている火事(炎症)を素早く消し止めるのが得意。一方で、なぜ火事が起き続けているのかという「燃えやすい体質」を見直す視点も、同じくらい大切にしたいもの。西洋医学と東洋医学それぞれのアプローチを知ることで、選択肢が広がります。
西洋医学の治療と薬との付き合い方
利胆薬や強肝剤、食事療法、点滴などが一般的な治療として用いられます。ただ、利胆剤で胆汁の流れを促すことと、根本的な炎症を抑えることは必ずしも同じではありません。薬を長く続けても改善が見られない場合は、かかりつけの先生に相談しながら、体質面へのアプローチも視野に入れてみることをおすすめします。
漢方が体質から整えることを目指す理由
東洋医学は「病気ではなく、その子自身を診る」医学です。なぜその体が炎症を起こしやすいのかという根っこに目を向け、「冷えによる機能低下タイプ」と「余分な熱による炎症タイプ」を見極めたうえで、その子に合った漢方薬を処方します。体質に合わないケアは逆効果になることもあるため、この見極めがとても重要です。
ハルペッツの症例から見る漢方の可能性
当院では、長期間にわたって抗生剤・利胆剤・サプリメントを使い続けていた子が、漢方治療によって少しずつ薬を手放せるようになった症例があります。慢性肝炎のカールちゃん、若齢性肝炎のはっさくちゃんも、体質に合わせた漢方を続けることで回復の経過をたどっています。すぐに結果が出るものではありませんが、体そのものが「炎症を起こしにくい状態」へと変わっていけば、薬を減らせたり、数値が安定したりする可能性は十分にあるのです。
症例①:スタンダードプードルの慢性肝炎で漢方薬治療しているカールちゃん
犬の肝炎と向き合う飼い主さんへ―今日からできること
「病院の治療以外に、私にできることは?」という想いは、愛犬にとって何よりの特効薬。肝臓のケアは、特別なことだけでなく、日々のちょっとした「選択」の積み重ねです。愛犬の表情や毛並みを観察しながら、心地よいと感じる肝炎のケアを少しずつ取り入れてみませんか。
食材選びで意識したいこと
肝臓に良いとされる栄養を「足す」前に、まずは肝臓が解毒にエネルギーを使わなくて済むように「引く」こと。そして、季節に合わせた「熱」を逃がす食材選びが大切。
・酸化と添加物を引く: 古いフードの油や、着色料、保存料などの添加物の多いおやつは肝臓の大きな負担。新鮮なものを選び、保存状態にも気を配る。
・春の「熱」を逃がす食材: 春特有の熱感には、セロリやトマトがおすすめ。セロリの香りは気の巡りを整え、トマトは体にこもった熱を優しく冷ましてくれる心強い味方に。
・肝をいたわる「赤い」食材: 赤い食材は血液や肝に関わりが深いとされ、クコの実は「肝」を補う代表的な食材。少量をごはんにトッピングするだけで、冷えなどによって血流が弱くなり機能が衰えた目や肝臓の養生に繋がる。
旬の食材の力を借りながら、今の体質に合った食材を少しずつ取り入れてみてください。その一口が、肝臓の負担をきっと軽くしてくれることでしょう。
春の養生と心のゆとりが愛犬を救う
春は体内に熱がこもりやすい季節です。朝夕の涼しい時間帯の散歩を選ぶなど、無理のないペースで過ごすことが肝臓への負担を減らしましょう。そして、飼い主さんの不安は不思議と愛犬にも伝わってしまいます。一緒にゆったりとする時間を過ごしてみてください。その心の安定が、愛犬の自律神経を整え、肝臓の回復を後押しする大切な養生になるはずです。
犬の肝炎についてよくあるご質問。もっと知りたい方へ
Q1.飼い犬が肝炎と診断されました。お薬はずっと飲み続けなければいけないのでしょうか?
西洋医学では、肝炎の「炎症そのもの」を治療するにはステロイドが必要になるケースがほとんどです。ステロイドを使わない場合、利胆剤やビタミン剤で症状をコントロールしながら付き合い続けることになりやすいのが現状です。一方、東洋医学では体質から炎症が起きにくい状態を目指すアプローチをとります。薬をずっと飲み続けることへの不安を感じている飼い主さんは、漢方治療を並行して検討してみることも一つの選択肢です。
Q2.家でできる食事の工夫はありますか?また、何に気をつければいいですか?
慢性肝炎だからといって、すぐに肝硬変に進行するわけではありません。日々の食事でまず意識してほしいのは、療法食への切り替えよりも「愛犬の体に余分な負担をかけない食材選び」です。具体的には、添加物が少ないもの、カビのリスクが低い新鮮な食材を意識してみてください。毎日の小さな積み重ねが、肝臓への負担を軽くすることにつながります。
Q3.漢方は苦くて飲ませにくいイメージがありますが、大丈夫でしょうか?
意外に思われるかもしれませんが、体に合った漢方薬は自分から進んで食べてくれる子も多いです。自ら食べない場合でも、口に入れれば飲み込んでくれることがほとんどです。むしろ西洋薬のほうを嫌がるケースも多く、漢方のほうが飲ませやすいと感じる飼い主さんもいらっしゃいます。まずは気軽に試してみてください。
まとめ|犬の肝炎に悩む飼い主さんに、体質から整える選択肢を
ずっと一緒に過ごしてきた大切な家族だからこそ、数値という「点」だけにとらわれず、丸ごとの命に向き合ってあげたいものですよね。
西洋医学でしっかり現在の状態をコントロールしながら、東洋医学で体の根っこから整えていく。その積み重ねが、愛犬の穏やかで長い毎日を支えます。一人で悩まず、広い視野を持って、愛犬にとって一番心地よい良い方法を探していきましょう。

















