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- 高齢犬の溶血性貧血|「今」を大切にする体にやさしい治療法
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- 2025/10/29
- 免疫性の炎症
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犬の溶血性貧血は、赤血球が壊されることで貧血が起こり、重症の場合は命に関わる可能性がある病気です。完治後も再発することがあり、長く治療を続けている方もいるでしょう。
多量のステロイドや免疫抑制剤を使用するのが一般的ですが、特に高齢犬の場合、薬のメリットよりもデメリットの方が勝ることが多いです。そのため、根本から原因を治療して、高齢犬の体への負担が少ない「漢方薬治療」の選択が必要かもしれません。
今回は、犬の溶血性貧血の基礎知識と、症例からみる漢方薬治療のメリットを解説します。少しでも楽な生活を送れるように、どのような選択肢があるのかを理解しておきましょう。
犬の溶血性貧血とは?高齢犬に起こる症状や予後を解説

犬の溶血性貧血は、赤血球が壊されることで貧血が起こる病気です。重症の場合は命に関わることもあるため、早期発見と迅速な治療の開始が重要です。ここでは、溶血性貧血の症状と危険性を解説します。
赤血球が壊されて貧血になる
犬の溶血性貧血は、赤血球が破壊されることで貧血が起こり、急性症状や重症の場合は命に関わることもある危険な病気です。特に、免疫が異常に働き赤血球を攻撃する免疫介在性溶血性貧血がよく見られます。
溶血性貧血の原因はさまざまありますが、一般的に多く見られるのは、自己免疫疾患によるものです。犬自身の免疫システムが、赤血球を異物として見なして攻撃してしまうことで貧血を引き起こします。
よく見られる症状は以下のとおりです。
・食欲低下
・元気がなくなる
・歯茎や舌などの色が白っぽくなる
・尿の色が濃くなる、量が増える
重症の場合は命に関わることもあるため、疑われる症状があれば早めに動物病院を受診しましょう。
参考:ペットサポートのPS保険「犬の溶血性貧血の症状と原因、治療法について」
溶血性貧血は危険な病気?予後や死亡率とは
犬の溶血性貧血は、急激に進行し、最悪の場合突然死する可能性があります。死亡率は30〜80%という報告もあるため、できるだけ早く適切な治療を開始することが重要です。
また、完治しても再発することもあるため、長期間にわたる治療が必要となります。予後を少しでも良くするためには、早期の診断と適切な治療が必要不可欠です。犬の不調に早く気がつけるように、食欲や元気、尿の色などを日頃からよく観察しておきましょう。
寝たきりになる可能性もある
犬の溶血性貧血は、重症になると貧血で動けなくなり、寝たきりになってしまったり他の病気や不調を引き起こしたりする可能性があります。治療法としては、ステロイドや免疫抑制剤を使用するのが一般的です。
しかし、これらの治療は犬の体に大きな負担となり、他の免疫疾患を併発してしまう子もいます。そのため、犬の体にかかる負担のことを考えると、体に優しい治療法を選択することも大切です。
より楽な生活をするために|高齢犬の溶血性貧血治療で大切なこと

犬の溶血性貧血の治療は、特に高齢犬には負担が大きく、メリットよりもデメリットの方が勝りやすいです。より楽な生活をするために、治療において大切なことを理解しておきましょう。
体に負担のかかる治療を再考する
溶血性貧血の治療で一般的に行われるステロイドや免疫抑制剤は、犬の体に負担がかかり、免疫が弱まることで別の病気にかかる可能性があります。特に、高齢犬は免疫や内臓が弱っているため、薬の副作用や負の影響が出ることが多いです。
若い犬と同じように多量のステロイドや免疫抑制剤を併用すると、足腰や肝臓が弱まるだけでなく、免疫も一気に弱まってしまいます。そのため、治療によって一時的に数値が改善しても、すぐに数値が暗転して転げ落ちるように悪化していくことがほとんどです。
ステロイドで体調が悪化する場合は、ステロイドに耐えられないくらい免疫が弱っていると考えられるため、減らすまたは治療を止めて他の方法を探すことをおすすめします。
生活の質を整えることが大切
ステロイドによる治療を続けると、免疫や臓器に負担がかかり、見た目や数値が改善しても体のだるさやしんどい状態は続いてしまうことが多いです。そのため、生活の質が下がり、「今」を楽しむ生活が送れなくなってしまうことがあります。
病気を完治させるのも大切ですが、「今が楽か」「家族と幸せな時間を過ごせるか」を考えることが大切です。犬がより長く楽な生活を送れるように、どのような治療がその子に合っているのかを一度検討してみるとよいでしょう。
犬の溶血性貧血の症例からみる漢方薬治療のメリットとは

犬の溶血性貧血の治療は、ステロイドや免疫抑制剤を使用するのが一般的です。しかし、徐々に弱っていく犬をみて、治療法に悩む飼い主は多いでしょう。そこで、体に優しく高齢犬の体の負担も少ない漢方薬治療について、症例と併せて紹介します。
ステロイドを減薬できた症例
免疫介在性溶血性貧血の治療では、多量のステロイドと免疫抑制剤が併用されるため、それらの副作用によって逆に貧血が進んでしまうことがよくあります。新しい薬を試すと数日で改善しますが、症状の悪化を繰り返したり悪化するスピードが早くなったりするなど、さまざまなリスクが出てくるのです。
この場合、ステロイドを減薬する必要がありますが、急にやめるとリバウンドで急激に悪化することがあるため、難しい判断となります。
当院の症例では、この局面で漢方薬で免疫をしっかりと整えながら、ステロイドを減らすという選択をして貧血が改善しました。ある程度(約1mg/kg以下)まで減らすことができているため、リバウンドに注意しながら少しづつ減薬しています。
違う病気を合併していても治療できた症例
溶血性貧血と加齢からくる腎虚を漢方薬でケアしていた途中で、肝臓に種瘤が見つかった症例です。
16歳になる高齢犬ですが、漢方薬を服用してステロイドを止めてからもしっかりと数値が維持できています。途中で見つかった種瘤は4〜5cmまで大きくなっていましたが、年齢的にも手術のリスクは大きいため、漢方薬で体や免疫を維持する方法を選択しました。
漢方薬治療と定期的なモニタリングで進行や症状を遅らせながら、寿命までうまく共存していける可能性があります。
おでかけを楽しめるようになった症例
高齢犬の免疫介在性溶血性貧血の治療で、多量のステロイド投与による副作用が大きく、寝たきりになるのが心配された状態から改善した症例です。
ステロイドや免疫疾患による治療は、病気を治療しているのではなく単に症状を抑えているだけのため、特に体力や免疫が弱っている子はどんどん弱ってしまうことがあります。この症例でも、貧血の数値の改善は少し見られたものの、副作用によってどんどん弱っていっていました。
そこで取り入れたのが、貧血を引き起こしている免疫の状態を治療する漢方薬治療です。免疫疾患や体の状態を改善させるため、症状だけでなく体調も回復し、今ではお出かけを楽しめるまでに回復しました。
犬の溶血性貧血についてよくある質問
Q1. 漢方薬治療はすぐに始められますか?
はい、予約をしていただければすぐに始められます。初診時に体調や現在の治療内容を確認したうえで、その子に合った漢方薬を処方します。処方後はその日から服用を始めることができます。Q2. 漢方薬で効果が出たと感じたら、今まで飲んでいた薬をやめてもいいですか?
効果を感じても、自己判断で薬を急にやめるのはおすすめできません。ステロイドや免疫抑制剤を急に中止すると、リバウンドで症状が悪化することがあります。状態を見ながら、主治医と相談して少しずつ減らしていくことが大切です。Q3. 高齢犬でも漢方薬を飲めますか?
はい、飲めます。漢方薬は自然由来の成分で作られており、体への負担が少ないのが特徴です。高齢犬や体力が落ちている子でも、無理なく続けられる治療法です。まとめ|元気な時間を少しでも長くするために漢方薬治療も検討を
犬の溶血性貧血は、重症になると命にも関わる危険な病気です。予後を少しでも快適にするためには、早期発見と迅速な治療が欠かせません。
また、完治しても再発することもあり、長期的な治療が必要になることがほとんどです。しかし、一般的なステロイドや免疫抑制剤による治療は、特に高齢犬には体への負担が大きく逆に悪化する可能性もあります。
そのため、元気な時間を少しでも長くするために、漢方薬治療を検討するのも一つの方法です。根本にある原因から治療するため、体に優しく、高齢犬にも負担が少なく続けられます。
現在の治療に疑問がある、できるだけ負担の少ない治療法を選択したいと考えている方は、一度当院へご相談ください。

















